SREチーム 鈴木心之介 です。 職歴の空白 を経て参画しました。
先日、株式会社オクト (88oct.co.jp
) だった弊社は、社名変更し、株式会社アンドパッド (andpad.co.jp
) になりました。社名変更といえば、めちゃくちゃ、それはもう大変な量の仕事がありますが、ここでは社名変更して co.jp
ドメインを複数保有する話を書きます。
短い結論
いま保有している co.jp
ドメインを、JPDirerct に移管しましょう。JPDirect は、 jp
ドメインのレジストリである株式会社日本レジストリサービス(JPRS) が運営するレジストラで、1組織1ドメインの緩和申請に対応していることを表明しています。
JPDirectの管理画面で新ドメインを仮登録すると、直ちにDNS設定を組めるようになります。仮登録から6ヶ月以内に社名変更の法人登記を完了し、1組織1ドメイン制限緩和の申請を完了する必要もあります。このため仮登録を何月何日に実施するかは、意外に重要な要素なので、スケジュールを慎重に検討してください。
長い話
弊社は旧社名のドメインを、お名前.comで購入、更新していました。
社名変更の話が本格始動したときに、ドメイン変更についての私を含めて弊社メンバーの認識は、
- ドメイン取得時は、法人登記やハンコやら書面提出が必要であること
- 1組織1ドメインの制限があること
- net や xyz みたくシュッと買えるでしょ。即日で
ヤバいです。誰もわかってないです。炎上プロジェクトです。幸いにして日程はフィックスしていなかったので調べまくりました。
お名前.comのサービスの制限
お名前.comでは、「ドメイン名変更」と「登録者情報の変更(記載事項変更)」によって、新旧ドメインを一定期間、持っておくことができるとわかります。
一定期間については以下に記載があり、特に旧ドメインは6ヶ月で利用できなくなります。また「旧ドメイン名の文字列は廃止後5ヶ月間は登録不可となる」のため、その後は別の法人が取得可能となります。
まあそんなもんかと思いつつ、いや待て。旧ドメインは、会社のメンバーのメールアドレスにも使っていて、名刺にも印刷しており、お客様にも広く配っています。仮に、旧ドメイン強制廃止の6ヶ月を過ぎて、登録不可の5ヶ月も過ぎて、ぜんぜん弊社と関わりのない企業が、旧ドメインを取得されたとします。そのとき古い名刺のメアドに、お客様からメールが送られたら、たいへんややこしい事態になります。それは避けたい。
新旧の両ドメインを恒久的に保持したい
お名前.comの制約と向き合うことで、我々の本当の欲求が理解できました。新旧ドメインを、恒久的に保持したいのです。
ところで1組織1ドメインってどこから湧いてきたのですか。所与の制約みたく言ってますけど。その謎を探るべくググってみるものの、数年前の古い情報だったり、真偽の定かでない情報だったり、素性の怪しい業者の怪しいページばかりが引っかかりました。つらい。社名変更ほんとにやるんすか。そんな声が主に私から上がります。
co.jp
は 1組織1ドメインしか保有できません、が、、、
ほうぼう調べて、JPRSの属性型JPドメインの規則が出所とわかり、以下の理解に至りました。勘所がなかったので遠回りになりました。
トップレベルドメインのひとつである .jp
のレジストリは、株式会社日本レジストリサービス(JPRS)です。お名前.comなどはレジストラです。我々平民がレジストラからドメインを購入しますと、レジストラがレジストリに、「お名前.comで、株式会社オクトが、 88oct.co.jp
を1年購入した。法人登記はコレです」のように情報を上げます。レジストリは、ドメインの利用状況であったり、法人登記の確認を行なったりします。
.jp
ドメインは「汎用JPドメイン」。対して co.jp
, go.jp
, ac.jp
などは「属性側JPドメイン」と呼びます。とJPRSが定義しています。
ページの下のほうに「属性型(組織種別型)・地域型JPドメイン名登録等に関する規則」というリンクがあります。
「第9条(登録できる属性型地域型JPドメイン名の数)」として、「登録できる属性型地域型JPドメイン名の数は、1組織について1とする」が謳われています。しかし、続く項として、合併、組織名変更、事業譲渡などの場合は、「1組織について2以上の属性型地域型JPドメイン名の登録をすることができる」とも定められています。
JPRSが、属性型jpドメインに関する規則として、そのように定めて運用しているのですね。
ところで、その規則に則って対応してくれるレジストラは?
JPRS直営のレジストラ「JPDirect」
そんな都合のいい組織があるわけが、あったわ。やたら情報の解像度の高いページがあり、問い合わせ窓口もあり、藁にすがる思いで泣きつきました。
料金はこのようで。お名前.comに慣れた金銭感覚からすると、なかなか強気の料金です。
ここで損得勘定です。
実のところ別法人を立てることで、お名前.comに置いたまま新旧ドメインを恒久的に保持することも、論理的に可能です。別法人なら法人登記が異なりますので。
決定打を欠き、弊社コーポレート部門の長を巻き込んでみたところ、社名変更で新旧ドメイン保持のためだけに別法人を立てるのと比べたらJPDirect安い!!との声を頂戴し、JPDirectで進めることとしました。
JPDirect にアカウント開設
https://jpdirect.jp の右上「ドメイン管理ページ」から「お客様IDの新規取得はこちら」のリンク先で、アカウント開設ができます。
JPDirect に旧ドメイン移管
いやこれ必要か?と思ったでしょうが、JPDirectが、社名変更にかかる1組織1ドメイン制限緩和の申請の条件として、新旧ドメインをJPDirectに置いていることとあるため、移管してきます。
お名前.comとJPDirectの両方で、所定の手順に則って進めます。だいたい2時間くらいで終わります。お名前.comでのDNS設定を引き継いで、JPDirectに移管されるので、寸断もありません。
JPDirect で新ドメイン取得
新ドメインは、いつでも仮登録で取得でき、DNS設定を組めるようになります。
弊社ではAWS Route 53を使っていますので、新ドメインのHosted Zoneを作り、NSレコードをJPDirect側の新ドメインに入れたら、nslookupなどで開通確認できるようになります。
なお仮登録から6ヶ月以内に「1組織1ドメイン制限緩和の申請」を完了し、本登録も完了する必要があります。
1組織1ドメイン制限緩和の申請
JPDirectが仲立ちして手続きが進みます。社名変更の法人登記手続を終えて、社名変更の事実を証明する書面等を用意して、一部はFAXで送るなど慣れがないと難しいワークフローです。
「法人登記の手続を終え」があるため、あまり早い日に新ドメインを仮登録すると、たいへん難しい状況になる可能性があります。余裕を取りすぎると、新ドメインでのメアドや名刺、コーポレートサイトの制作の日程も組みづらくなるため、仮登録をいつやるか難しさがあります。
新ドメインの本登録
新ドメインを仮登録した場合は、本登録する必要もあります。こちらは旧ドメインを取得し本登録された時と同様ですが、どのような書類が必要かは、JPDirectにご確認ください。
むすび
社名変更に立ち会う機会は初めてで貴重な経験でした。皆様が円滑に社名変更と co.jp
を複数保有されることを祈ります。長文お読みいただきありがとうございました。