アンドパッドで働きながら日本語を学ぶ

はじめに

こんにちは、アンドパッドのi18nチームで開発をしているGopiです。

この記事は ANDPAD Advent Calendar 2025 の記事です。

インドのバンガロール出身です。2023年10月にアンドパッドに入社しました。現在、フルタイムで働きながら日本語を学習しています。

今回は、日本企業で働く外国人エンジニアとして、なぜ・どのように日本語を学んできたかという2年間の経験をシェアします。

フルタイムで働きながら言語を学ぶのは簡単ではありません。しかし、N5からN3まで合格し、現在N2に挑戦しています。完璧ではありませんが、挑戦を続けることで確実に成長できました。

同じ状況にいる方の参考になれば幸いです。

なぜ日本企業で働く外国人エンジニアに日本語が必要なのか

私の業務

アンドパッドは日本の建設業界向けのプロダクトを提供しており、現在、海外展開を見据えた国際化対応を進めています。

私が所属するi18nチームでは、以下の業務を行っています

  • 主な業務: 日本語で作られたプロダクトの英語翻訳、ローカライゼーション対応
  • チーム連携: 他プロダクトチームへのi18n導入サポート、ドキュメント作成

日本語が不可欠な理由

日本企業で働く外国人エンジニアとして、日本語習得は単なる「あったらいい」スキルではなく、業務の質に直結する必須スキルでした。

1. 翻訳品質の向上

「ANDPAD」のプロダクトは日本語ベースで開発されています。日本語UIテキストを英語に翻訳する際、元の日本語の意図を正確に理解することが最も重要です。

例えば、建設業界特有の専門用語や、日本語の「です・ます」体と「だ・である」体のニュアンスを理解し、適切な英語表現を選択する必要があります。機械翻訳では対応できない文脈理解が求められます。

2. チーム間コミュニケーションの円滑化

i18nチームは、さまざまなプロダクトチームと連携します。私は主にフロントエンド開発を行っていますが、日本語と英語の両方を理解できる強みを活かし、以下の役割も担っています:

  • 日本語でのミーティングへの参加
  • ローカライゼーション要件についての議論
  • i18n導入に関するドキュメントを作成し、他チームの開発者と共有

日本語でのコミュニケーション能力がなければ、これらの業務を効率的に遂行できません。

3. 技術仕様書の理解

日本語の技術仕様書や要件定義書を直接理解できることで、翻訳作業や実装がスムーズになります。特に建設業界の専門用語は、日本語で理解しなければ適切な英語訳を見つけることが困難です。

このような理由から、日本企業で働く外国人エンジニアとして成長するために、日本語学習が不可欠だと判断しました。

日本語学習を始めたきっかけ

インドでの夢:日本で技術を学びたい

大学在学中から、日本で働きたいという夢がありました。日本は技術が進んでおり、仕事だけでなく日常のライフスタイルからも学べることが多いと感じていました。

大学の最終年で日本語学習を開始し、ひらがな、カタカナ、基本的な挨拶を学びました。日本のアニメを字幕付きで視聴し、少しずつ日本語の音に慣れていきました。

夢の実現:アンドパッドからのオファー

大学最終年にアンドパッドから内定をいただきました。喜びと同時に、「日本語がまだ十分ではない」という不安もありました。しかし、日本で働くためには日本語が必要だと理解し、より真剣に学習することを決意しました。

日本に来てからの決意

入社後、チームメンバーは親切で、英語でのコミュニケーションも可能でした。しかし、私は「日本語環境で働きたい。同僚に負担をかけたくない」と考えました。

特にi18nチームでは、日本語テキストを日常的に扱います。日本語でのコミュニケーション能力が業務の質に直結します。チームミーティングで自分の意見を述べたり、不明点を日本語で質問して疑問を解決したりすることが、より良い仕事につながると感じました。

私のJLPT学習の道のり

一般的な学習時間の目安によると、各レベルの合格には以下の学習時間が必要とされています:

レベル 累計勉強時間
N5 300〜600時間
N4 600〜1,000時間
N3 1,000〜1,700時間
N2 1,700〜2,200時間
N1 2,200〜4,500時間以上

この目安を参考に、毎日2時間から2時間半ほどの学習を目標としました。

N5・N4:基礎構築と実践への適応

学習方法:

インドで『みんなの日本語』教科書を使用し、毎日2時間から2時間半ほど学習しました。ひらがな、カタカナ、数字、基本文法を反復練習しました。

しかし、日本に来て気づいたことがあります。教科書の日本語と実際の日本語は大きく異なるということです。

いくつかの印象的な経験がありました:

文化的な違いの学び

ある日、マネージャーとレストランに行き、緑茶が出されました。インドでは紅茶に砂糖を入れるのが一般的なので、同じように考えていました。しかし、日本の緑茶には砂糖を入れないということを知らず、さらに「さとう(砂糖)」と「しお(塩)」を言い間違えてしまいました。この経験から、言語だけでなく文化的な違いも学ぶ必要があると理解しました。

「と思います」の過剰使用

業務で話す際、丁寧でプロフェッショナルに聞こえると考え、「と思います」を頻繁に使用していました。「このバグを直すと思います」「明日会議があると思います」など。

しかし、同僚から「いつも『と思います』は使えない」と指摘を受けました。特に事実を述べる際に「と思います」を使うと、不確かで非専門的な印象を与えることを学びました。

学習方法の改善:

これらの経験から、学習方法を見直しました:

  • 『みんなの日本語』を継続しつつ、業務で使用する漢字を重点的に学習
  • YouTubeで日本語の動画を視聴し、実際の会話を聞く練習
  • 同僚と話す際、間違いを指摘してもらう

結果:

基礎をしっかり固め、実践的な学習も加えることで、N5とN4に一回で合格しました。

N3:業務と学習の統合

N3の段階では、より真剣に取り組みました。

学習方法:

1. 会社のサポート:

アンドパッドは日本語学習プログラムを提供してくれました。週2回のクラスで、日常生活、仕事、観光地などについて話しました。

月に一回、5分間のビデオを作成するMOT(Monthly Output、月次アウトプット課題)がありました。最初は自己紹介、最後は長野旅行について話しました。このMOTのおかげで、スピーキング能力が大きく向上しました。

2. ポッドキャストとリスニング:

先生の推薦で、「あかね的日本語教室」のポッドキャストを毎日通勤中に聴きました。ウェブサイトのスクリプトも読み、漢字を学習しました。リスニング能力は大きく向上しました。

3. 日本の映画:

「恋はつづくよどこまでも」「君の名は。」「花束みたいな恋をした」など、さまざまな映画を視聴しました。最初は字幕付き、徐々に字幕なしで理解できるよう努力しました。

4. 業務資料の活用:

会社の資料、特に建設業界に関するプレゼンテーションを読み、専門用語を学習しました。これは、i18n業務で建設業界の用語を翻訳する際に直接役立ちました。

例えば、「施工管理」「工程管理」「図面」といった建設業界特有の用語を日本語で理解することで、英語に翻訳する際に適切な技術用語を選択できるようになりました。

5. 同僚との会話:

時間がある時、同僚と日本語で会話しました。インドから来た先輩もおり、彼らは1年先に日本語を学習していたため、毎日日本語で会話しました。

これらの方法により、私の日本語は基礎レベルから「日本で生活・仕事ができるレベル」まで向上しました。

結果:

N3も一回で合格しました。この時点で、日常的な業務コミュニケーションはかなりスムーズにできるようになりました。

N2:現在進行中の挑戦

N2は、これまでとは全く異なるレベルでした。

一回目・二回目:不合格の経験(2024年12月、2025年7月)

正直に言うと、N2の難易度を過小評価していました。漢字の難易度が大幅に上がり、文法も複雑になり、リスニングも速くなりました。

2回不合格になり、落胆しましたが、諦めませんでした。点数は徐々に向上しており、進歩はありました。

何が難しかったか:

漢字:

N2レベルでは、似た形でも意味が全く異なる漢字が多く登場します。例えば、「待つ」と「持つ」、「聞く」と「開く」など、一つの部首の違いで意味が変わります。また、「観察」「観測」「観光」のように、同じ漢字を使っていても組み合わせで意味が変わる熟語も増え、すべて覚えるのは困難でした。

特に業務で使う専門用語の漢字は、日常会話では出てこないため、覚えにくかったです。

敬語:

「です・ます」「尊敬語」「謙譲語」の使い分けに苦労しました。例えば、「言う」は尊敬語で「おっしゃる」、謙譲語で「申し上げる」になります。

最初は、いつどの敬語を使うべきか全く分かりませんでした。会議で上司に「私が説明します」と言うべきか「説明させていただきます」と言うべきか、判断できませんでした。

N2の学習を通じて、徐々に理解できるようになり、現在は基本的な敬語を使用できます。完璧ではありませんが、以前より大きく改善しました。

助詞:

「が、を、に、で、は」の使い分けに苦労しました。例えば、「会議が始まる」と「会議を始める」の違いや、「東京に行く」と「東京へ行く」のニュアンスの違いなど、微妙な違いを理解するのが難しかったです。

時々、助詞を使いすぎたり、間違った助詞を使ったりしました。

学習方法の再改善:

  • ワークブック「短期合格 日本語能力試験 N1・N2語彙」を使用
  • Bunpro でJLPT練習問題と文法学習を毎日実施
  • JLPT Sensei で、インドから来た先輩と一緒に漢字を学習
  • チームメンバーに「文法の間違いをしたら、教えてください」とお願い

三回目:2025年12月 - 結果待ち

2回の不合格を経験し、今回はさらに真剣に学習しました。現在、結果を待っています。

書道への挑戦:文化を通じた漢字学習

N3合格後、YouTubeで日本の書道を見て、「これは漢字の練習に良いかもしれない」と思いました。

日本の文化に興味があり、書道を試してみたいと考えました。また、漢字を書く練習にもなると考えました。

しかし、非常に難しいです。筆で美しい線を書くことは、本当に大変です。最初、全くうまくできませんでした。

何度も練習し、ついに「和」という漢字を書くことができました。完璧ではありませんが、今まで書いた中で最も良いものです。

「和」は私にとって大切な漢字です。平和、調和。さまざまな意味があります。

書道を練習すると、漢字の構造をより深く理解できます。まだ下手ですが、続けていきます。

まとめ:外国人エンジニアとしての成長

私が学んだこと:

フルタイムで働きながら日本語を学習することは、簡単ではありません。しかし、可能です。

アンドパッドで働きながら、N5、N4、N3に合格しました。N2は2回不合格でしたが、2025年12月に再挑戦しました。

完璧である必要はありません。挑戦を続けることが重要です。

今後の目標:N1合格とその先

私の最終目標はJLPT N1に合格することです。N1に合格することで、以下のような貢献ができると考えています

  • より高度な技術的議論を日本語で行い、アーキテクチャ設計などの重要な意思決定に積極的に参加
  • 日本語の技術ドキュメントを英語に翻訳するだけでなく、英語の最新技術記事を日本語に翻訳してチームに共有

そのために、全力で努力します。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。